チーズのセミナーいろいろ (その4)    2002年10月29日


 チーズプロフェッショナル協会(CPA)主催「五感を使ったチーズの評価法」 in 大阪、8月末に行われた圧搾タイプのセミナーに続いて、今回は「白カビ・ウォッシュ・青カビタイプ」に関する評価法のセミナーに参加してきました。

 ■ 「五感を使ったチーズの評価法〜白カビ・ウォッシュ・青カビタイプ」
        in 大阪(天満橋・ドーンセンター) 2002 10/29
 

 五感を使ったチーズの評価法(官能評価の手法)を各種のチーズに適用・学んでいこうとする講座のシリーズ、白カビ・ウォッシュ・青カビタイプの巻です。(詳しい内容はCPAのHPにあります。)

 前回(セミハード&ハードチーズの巻、こちらで報告しています)に比べ、今回は参加者少し増えて35人前後。ほとんどの方はチーズのプロ(レストランやお店でチーズを扱ってらっしゃる方、チーズ・プロフェッショナルの資格をお持ちの方)ばかり。
 相変わらず浮いていることこの上ありませんが、チーズがどんな風に作られるのか、チーズの状態の理由(たとえば、表面ががさがさした感じのチーズがありますが、なぜそんな状態が起こるのかetc.)など、興味深くて有意義なお話と、美味しいチーズを堪能した3時間弱でした。

 2種類・2状態の白カビチーズ、3種類のウォッシュチーズ、4種類の青カビチーズの、合計9種類について、見た目、匂い、味、触感などでチーズの状態を自分なりに判断しながら、講師の先生方が詳しく説明される状態や特徴の把握法をお聞きしていきました。9種類のチーズは、

  1. カマンベール・ド・ノルマンディ(フェルミエ製) 若い物と熟成の進んだ物の2状態
  2. カマンベール パストリーゼ(工場製) 若い物と熟成の進んだ物の2状態
  3. ポンレヴェック(フランス ノルマンディ)
  4. マンステール(フランス アルザス)
  5. モン・ドール(フランス フランシュ=コンテ地方)
  6. ゴルゴンゾーラ・ドルチェ(イタリア ロンバルディア、ピエモンテ州)
  7. ブルースティルトン (イギリス レスタシャー、ダービーシャー、ノッティンガムシャー州)
  8. ロックフォール (フランス ルエルグ地方)
  9. ブルー・ド・ジェックス(フランス ジュラ地方)

 判断するポイントは、I.外観、II.テキスチャー、III.フレーバーの3面。タイプにより、ポイントが違う場合もありますが、主だったところは

  1. 外観 (ホールまたはブロックのままで)

     ●全体の形 ●カビの状態 ●表皮の状態 等を見ます。

  2. テキスチャー (半分に切ってみて)

     ●カードの色・光沢    ●(指で押さえて)堅さ
     ●熟成の状態(カードの中心に心が残っていないか)
     ●皮の厚さや状態    ●空隙の有無、状態
     ●カットし、口に含んだ時の溶け具合、粘りけ  を見ます。

  3. フレーバー (人数分にカットし)

     ●香りを確かめ
     ●口に含み 味(塩味・甘み・酸味・苦味・旨味など)、特有の風味、風味の持続性について確認します。


 9種類のチーズ一つ一つに、これらの項目に関する判断をしていきました。
 (すべての画像はクリックすると、大きな画像が見れます。)

  1. カマンベール・ド・ノルマンディ(フェルミエ製) 若い物と熟成の進んだ物
  2. カマンベール パストリーゼ(工場製) 若い物と熟成の進んだ物

     195.jpg   机の上には、どどーんと、まだホールのままのカマンベールチーズが4つ(チーズには番号がついています)。急遽、どれがどれか当ててみようと言うことになり、見たり、触ったり、臭いをかいだりして、テーブルごとに答えを考えました。  素人の私は?なので、詳しい方にお任せしっぱなし。でも、皆さん、え〜っ 無理だよおぉと言いながら、なかなか盛り上がっていました。

     写真では香りはわかりませんが、素人の私でも感じた臭いに、2番の厭なきついアンモニア臭、4番の芳しい言いたいくらいな草の香り、が印象に残りました。

     次に、半分に切って切り口の状態を見ます。これで、どれが若いか熟成しているかはわかりますね。
     表側と裏側の皮の状態が随分違うのも確認しました。普段家で食べている時は、なかなか表向き(包んである時、下側の面)に見ることがないので、いい機会です。

     197.jpg   1番のチーズの、表側・裏側から見た写真です。
     まだ芯があります。
     切ると、若いか熟成しているかはわかりますね。
     198.jpg 

     199.jpg   2番のチーズの、表側・裏側から見た写真です。
     中身がとろけ出すのが速い!
     皮の表面、ところどころ、ざわざわした、ぐちゅっと潰れたような(ガマ肌、よくない)状態です。
     200.jpg 

     201.jpg   3、4番は、表/裏側の見た目があまり変わらなかったので、写真は1枚です。
     触ると柔らかいし、表面の白カビが黄色く変色しているので、4の方が熟成が進んでいるのがわかります。
     202.jpg 

    写真を見比べると、1番2番には(3番4番にも見られるガスホールより)大きな穴があります。

     203.jpg   その後切り分けて、口に入れて味や風味について確かめていきます。
     奥から、1・2・3・4番の順です。(2番、流れ出してしまってほとんど中身がないくらい ^^;;)

    ここで、クイズの正解。
    香りもヒントになりますし、工場製にはガマ肌や(カードをカットして作っているため)大きな気泡ができやすいこと、カードの色が一般には工場製が薄いことを考えると、「1番2番が工場製、3番4番がフェルミエ(農家)製、それぞれ番号が大きい方が熟成している」が正解でした。賞味期限は、順に、11/28、11/14、11/14、10/31。
  3. ポンレヴェック (写真:手前、賞味期限は11/19)
  4. マンステール  (写真:左奥、賞味期限は11/26)
  5. モン・ドール  (写真:右奥、賞味期限は11/28)

     204.jpg   つづいて、ウォッシュタイプのチーズの評価に写ります。
     テーブルごとの、ホールの状態の3チーズです。

     モンドールは3番目にいただきましたが、スプーンにすくって食べたので写真はありません。らしい味の、美味しいモンドールでした。

     205.jpg  206.jpg  207.jpg

     実は、私はポンレヴェック/リヴァロのタイプは苦手(今まで美味しいと思ったことがない)なのですが、このチーズは好き嫌いの次元を越えて、食べれないな〜というくらい状態が悪かったです。
     切断面(左の写真)を見ると、穴にカビが生えているのがわかります。また、表面(真ん中の写真)のぼこぼこした中に、別(本来のカビ以外)のカビが生えているのがわかります。味が変化している可能性ありです。カットした状態(右の写真)も、鼻に近づけるとひどくきつい臭いがするし、あまり美味しそうに見えません・・・ ^^;;;
     で、口に入れてみると、とにかく苦い! えぐい!(お魚の内臓のえぐみを思い出しました) 食い意地が張ってる人なので出された物はよほどのことがない限り食べるのですが、このチーズは少し残してしまいました。特に、皮の部分はまったく食べることが出来ませんでした。

     208.jpg   こちらは、マンスールを半分に切ったところ。
     バランスの取れた形、綺麗な色合い・光沢、潤い(湿り気)がある感じなのが写真からもわかります。とてもいい状態で、私がこれまでに食べたことのあるマンスールの中で最高の美味しさでした。

     その他、ポンレヴェックについては、リネンス菌、白い粉がジオトリカムの胞子なこと、アミノ酸の結晶のチロシン(でも、旨味とは関係なし)、縁が黄色くなっているのはシードモナシス(表角細菌)でこの菌自身は悪い菌ではないが汚染があったことが分かる・・・など、いろいろ詳しいお話を聞いたのですが、残念ながら、基礎知識がないため、このあたりは理解/消化不良でした。(嗚呼、生物、もっと真面目に勉強しておくべきだったなあ。どこで、何の知識が役に立つか、人生分からないものです。)

  6. ゴルゴンゾーラ・ドルチェ
  7. ブルースティルトン
  8. ロックフォール
  9. ブルー・ド・ジェックス

     209.jpg   最後は、ブルーチーズです。

     時間が押してきたために、詳しいお話が聞けなかったのが少し残念。

     212.jpg   ロックフォール。
     羊乳なので、生地が白いです。光を遮断するために、必ず錫箔で包まれています。

     215.jpg   ゴルゴンゾーラ・ドルチェ。
     私は、ゴルゴンゾーラを食べると(白い部分)何となく酒粕の風味を感じることがあるのですが、「白味噌(の甘み)を感じる」との意見が。なるほど、それも納得。

     214.jpg   ブルー・ド・ジェックス。

     211.jpg   ブルースティルトン。
     青カビチーズはプレスせず、空気を残して作るものがほとんどですが、このチーズは多少プレスして作ります。だから、カビが小さく入っています。また、このチーズは(イギリスのチーズなので)チェダリングして作るのが特徴、そんなお話を聞きながら、チーズを味わい評価していきました。

 というわけで、とても盛りだくさんなセミナー、あっと言う間の3時間、時間が足りないくらいの内容でした。
 チーズの内容・種類が豊富なこともうれしいポイントですが、なぜそんな状態が起こるのか、作り方や設備、チーズのメカニズム(何が原料でその特徴がどう効いてくるか、菌や酵素の働きなどなど)までさかのぼった説明に、なるほどなあ、そういう風にきちんとわかるといろんなことが見えてきて面白いだろうなあとつくづく感じました。
 チーズの世界、とても奥深いです。まだまだ、知りたいこと、知るともっとチーズが面白く・美味しくなること、いっぱいありそうです。ちょっとずつでも、勉強していきたいなあ、そんな風に感じたセミナーでした。