9月の上旬、岩手へ出張してきました。
日曜を挟む日程だったので、オフの日に何しようか、考えました。
出発前は、盛岡で石川啄木や高村光太郎ゆかりの地をめぐったり、名物のわんこそばを食べよう、そう思っていろいろ下調べをしていました。
ところが、空港に着いて観光案内所でパンフレットを探していて、萬鐵五郎記念美術館のチラシが目に留まりました。松本俊介と彼を支え続けた友人畑山昇麓の展覧会が開かれているそうです。松本俊介は、一度ゆっくりみたいと思いながらなかなか見ることのできなかった画家。心を引かれます。
ところで、どこにあるんだろう? JR釜石線、土沢駅すぐ・・・
棚には、釜石線のパンフレットもありました。(盛岡から小一時間の)花巻と釜石を結ぶ、宮澤賢治が「銀河鉄道の夜」の舞台としてイメージした鉄道だそうです。花巻には賢治ゆかりの場所がたくさんあります。他にも沿線には、あ、遠野もある。民話のふるさととして有名なところですね。
これいいかもしれない、釜石線にゆっくり乗って、適当な駅で降りてぶらぶらして、萬美術館へ行って、帰ってきたらどうかな。そんな風に計画変更することにしました。




写真はクリックすると大きくなります。ほとんどは480x360
になります。もっと大きくなる物には※印をつけています。


銀河ドリームライン釜石線

tares 釜石線は、花巻と釜石を結ぶ全長90kmの鉄道です。
内陸と三陸沿岸を結ぶ鉄道として明治40年代に計画されました。大正の初めには、岩手軽便鉄道(花巻側)、鉄山鉄道(釜石側)として部分的に開通はしたものの、仙人峠のトンネル工事という難所があったため、全線が開通したのは、構想から40年たった昭和25年のことでした。


釜石線の駅にはエスペラント語の愛称名がついています。たとえば、花巻はチュールアルコ(虹)、土沢はフリーラ・リヴェーロ(光る川)、遠野はフォルクローロ(民話)といった感じです。
はじめそれを知らずに乗っていたので、次の駅(似内)は何て読むんだろうとアナウンスを聞いていたら、「次は〜ラマールボルド(えぇっー そんな読み方するの @_@)〜にたない、にたないでございます」・・・パンフレットを読むまで何のことやらよくわかりませんでした ^^;; なかなかおしゃれです。
また、駅構内の案内板や表示は、銀河をイメージする濃い青色で統一されています。ゴミ箱のペイントまでこれで統一されていて、とてもかっこよかったです。(上の写真は、遠野駅の表示。エスペラント名も書かれています。)

tares 土沢駅にあった、岩手軽便鉄道の説明版です。
クリックすると、700x550に大きくなります。

この鉄道、いかにもSLが似合います。10月にもまた走るそうです。大勢のファンが詰めかけるんでしょうね。


釜石 〜まずは 終点まで行ってみました〜

tares とりあえず釜石線に乗って、のんびり終点の釜石に向かいました。急行(主要な駅5〜6つに停車)でも2時間ほどかかります。
車窓をのんびり眺めて過ごしました。広々とした水田(人の形をした案山子、久しぶりに見ました)を抜け、ガッタンゴットン、汽車は走ります。汽笛の音を聞くと、ああ、なんか遠くに来たなあ そんな感じがします。
さすがに秋が早いですね。萩の花がもう咲いているし、ススキも穂が出ていて中にはもう白くふさふさしているものもありました。ほんの少し紅葉が始まっている木もあります。
遠野を過ぎ、しばらくいくと、だんだん山々がせまってきます。そのうち、トンネルに次ぐトンネル。工事の難所だった仙人峠です。それを過ぎると、もう釜石はすぐです。(写真は、釜石の駅前の花壇)

どうせなら三陸の海を見たいと思い、観光船はまゆりに乗ろうと考えたのですが、残念ながら9月になると本数がとても少なくなり、時間的に合いません。
そこで、とにかく海へ出るだけ出てみよう。そう思い、地図を頼りに30分ほど歩いてみました。
写真は、左から、(曇っていますが)釜石港の様子、港すぐそばの郵便局のガラス窓にあった名物のサンマの絵、途中で見つけた高村光太郎の碑(クリックすると、1500x900になります。左の説明文を拡大するにはこちら

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サンマの絵を見たからではないのですが(笑)、駅に戻り、そばにあった魚市場をぶらぶら。名物のホタテやサンマが売られていたので送ってもらいました。写真は、魚市場(シープラザ釜石)そばの魚のデコレーション付きポール。(クリックすると、400x1000になります。)


遠野 〜民話のふるさと〜

tares 釜石線は、急行・各停合わせて一日に6本ほど、だいたい2時間おきに走っています。各駅で、次の下りがやってくるまでの1〜2時間ほどを散策しました。
次は、遠野駅です。駅を降りると「民話のふるさとへようこそ」という碑が立っていたり、歩道やその傍らには民話の登場人物が描かれています。
観光客誘致も考えられた、古い物を残しながらきれいに整備された町並みでした。実際、サイクリングしている人、若い人も年配の人もそしてカップルの人も(この日見かけたのはここだけ)たくさんおられました。


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駅のホームや、駅前の噴水では、河童が観光客を出迎えてくれます。

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残念ながら、遠野も、観光スポットは駅からかなり離れています。遠野ふるさと村へ行ってみたかったのですが、駅から車で20分ではちょっと無理。せめて、一番近い観光スポット五百羅漢さんまで歩こう(片道50分のはず)と思ったのですが、けがのせいでゆっくりしか歩けませんから40分歩いてまだ石段にたどり着かず、駅に帰る時間を考えて断念。残念でした。

駅へ戻る道で見つけた、商家(説明はこちら)やお蔵のギャラリーで記念撮影。
駅前通の喫茶店(八百忠さん)を通り過ぎたとき、なんだか妙に懐かしい気がしました。戻ってよく見てみると、おおっ こんなところにもたれちゃんが!
いやいや、遠野はいいところだと思いながら、つぎの汽車へと乗り込みました。

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土沢 〜萬鐵五郎記念美術館〜

次は、土沢です。
他にも、住田(上有住駅)にある鍾乳洞(滝観洞)や、宮守のめがね橋、東和町の毘沙門天立像(ケヤキの一本成仏としては日本最大)などなど見物したい物はたくさんあったのですが、時間の限られた旅、後ろ髪引かれます。
土沢は、今回訪れた他の駅とは異なり、各停電車しか止まらない駅。降りるとき、乗るときには、自分でボタンを押してドアを開けなくてはなりません(駅のホームには、乗車したい人はこのあたりに立っていてくださいという札が立っています)。また、無人駅だし、各停はワンマン(運転手さんしか乗ってない)ので(券売機があるので切符は買えますが、改札できないので)、乗車するときに整理券を取らないといけません。運転席の後ろには、バスと同じように、整理券番号と運賃が表示された電光掲示板があります。
いや〜 はじめてのシステムばかりなのでどきどきしました。特に土沢から乗車するときは、駅どころか見渡す限り周りにだーれもいなくて、ちゃんと乗れるのか戻れるのかハラハラ、ドキドキ。目と耳は大きく開けて待っていました(<−その割には、お腹が空いたので、道沿いのJAで買ったリンゴをかじってましたが(笑))。

tares  土沢では、萬鐵五郎記念美術館を訪問しました。日本美術には全く不案内などんたれ、ここで生まれた萬鐵五郎(1885(明治18年)〜1927(昭和2年))が高村光太郎らとフューザン会を作ったメンバーで、日本初のキュビズム作家だなんて、全く知りませんでした。ご本人の作も蒐集された絵も、素晴らしかったです。
 絵も素晴らしかったのですが、生活の記録が興味深かったです。書簡類や同人誌などの展示はどこの記念館でもみますが、モダンな人だったらしく出来事や身の回りの人の写真をたくさん残しています。また、洋服のデザインもし、土沢で初めてミシンを買い実際にその洋服を縫って自分の子供に着せています(男の子も女の子もふんわりした帽子にワンピースを着せられて写真に残っています。子供さんは洋服を着せられるのがイヤだったそうです ^^;;;)。斬新な人だったんですね。
 そして、お目当ての特別展。松本俊介を支え続けた友人畑山麓コレクション展。もちろん、松本俊介もたくさんあるし、またコレクターとしても目のあった方ですね。日本の近代美術(ビッグネームでは国吉康夫、藤田嗣治、佐伯雄三)の、個性的で素晴らしい作品が並んでいました。
 さほど大きくない美術館ですが、とても見応えのある、印象に残るひとときを過ごすことができました。


花巻 〜宮澤賢治のふるさと〜

tares  最後に、花巻です。新花巻も新幹線の駅があるだけの感じでしたが、花巻駅も駅前には繁華街はありません。(有名な花巻温泉は、かなり離れたところにあるようです。) でも、街全体が、「宮澤賢治の街」をデザインしようとされているみたい。左の写真は駅前にあった(ふつうの)お店。打ちっ放しのコンクリートに、星座をかたどった模様が施されています。


tares  路線バスも利用できるようですが、名所を通りながら町を巡回する、どこまで行っても1回100円のフクロウ号を利用して、賢治ゆかりの地を通りながら(残念ながら、イギリス海岸や賢治の遊歩道などを実際に歩いてみることはできませんでした)、宮澤賢治記念館と童話村にむかいました。写真は、ある停留所そばのりんご園。


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記念館の入り口と、その傍らの水晶で作られたフクロウの置物です。
(記念館と童話村は同じ停留所。童話村はすぐにありますが、記念館はぐぐーっっと曲がりくねった坂を上っていかねばなりません。ちょっと、あります。後で童話館も訪ねるつもりだったので、2館共通入場券を購入。)
賢治の生い立ちや生活ぶりが、詳しい資料や展示品とともに、テーマごとに語られています。
また、特別展示室では、賢治の童話に関する研究結果が発表されています(毎年1作品のペース)。今年は、なめくじと猫。完成稿、定本以外に、異なる時代の原稿ではどのようなストーリーだったか、賢治は何を考えて改訂していったのか、などが解説されています。なるほど、深いものなんですね。

さて、最後に、童話館です。童話館の敷地へ入るアーチ、その手前にある駐車場傍らの「ふたごの星」の一場面を表したモニュメントです。賢治の世界が再現されています。

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駐車場の横には、銀河トレインの駅を模した売店、初代のトレイン(説明はこちら)があります。3枚目は、トレインそばのフクロウとたれちゃんです。お天気なら園内を定期的にトレインが走っていて乗車できるはずなのですが、ずっとおかしな雲行きだった天気、花巻ではかなりの雨となってしまいました。残念ながら、トレインは運休。乗れませんでした T_T

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園内は広大です。いろいろ工夫がされています。たとえばこちら、「月夜のでんしんばしら」の童話の一場面が、書かれ、実際にしつらえられています。落ち着いた女性の声で朗読がされていて、小道の奥にあるベンチにゆっくりすわりながら聴くことができます。


左:ぐるっと回りながら木槌で金属棒を順に叩いていくと、賢治が作曲した曲を奏でることができます。
中央:のっぽになるゲート。下の道には(うまく写っていませんが)星座が散りばめられています。奥には、不思議の国の鏡。まさに、宮澤賢治ワールドという感じ。
鏡の向こうは「賢治の学校」という建物になっています。5つの部屋があって(ファンタジックルーム、宇宙の部屋、天空の部屋、大地の部屋、水の部屋)、それぞれがとても工夫を凝らされていて、素晴らしいデザイン、レイアウトで、宮澤賢治の世界を、イーハトーブの魅力を、感じることができます。ここは、本当に感心(感嘆)しました。ここが見れただけでも、岩手に来てよかった。
右:ファンタジックルームの様子(一部)。真っ白な部屋に、大きな木。部屋のぐるりには面白い形をした真っ白ないすがおかれ、ゆっくりすわってくつろげるようになっています。いすに座ると視線の先には、真っ白な本棚。白いコート、大きなトランク・・・ となりの宇宙の部屋に通じる、真っ赤な道が見えています。

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tares  園内はまだまだ広いです。たとえば、山野草園、天空の広場、妖精の小径、ふくろうの小径、そしてその道すがらのさまざまな小道具達。時間があればゆっくり見ることができたのですが、残念。
また、高台にはログハウスが並んでいて、「賢治の教室」ということで賢治ワールドに現れる鳥・星・動物・植物・森について学ぶことができます。それぞれの部屋を専門家が監修されているようでとてもよくできているし、またどの部屋も体験型になっています。大人が訪れても子供が行ってもとても楽しめるつくりになっています。

 いやいや、ほんと、訪問して大満足の施設でした。もっと時間があったら、最高だったのですが。



岩手で食べたもの、おみやげ

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お昼に食べた駅弁です。お肉のおかずが主体の宮澤賢治弁当と迷って、こちらの海鮮弁当にしました。三陸名物の海の幸がいっぱいです。


夕飯は洋食にしました。
エンドウ豆のスープ(とても濃厚、野菜の味がしっかりしました)、地元名産の白金(はっきん)豚のポークソテー。何より絶品だったのが、地ビール。世嬉の一酒造のいわて蔵ビール。私が飲んだのは黒ビールのスタウト、とても香り豊かで何とも言えない苦みがありながらさっぱり。とても美味しいビールでした(おそらく今まで私が飲んだ地ビールの中では最高)。

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花巻市の鳥がフクロウだったこと、宮澤賢治がミミズクが好きだったことから、土産物屋さんにはフクロウがいっぱい。
そんな中から、まゆで作られた小さな置物を買いました。
左は、同じく、まゆで作られた遠野土産のとっくりと河童。