青森へ行ってきました       


 4月のはじめ、いのうえさきこ画伯掲示板に、「この夏、青森で、ナンシー関さんの追悼展覧会を開きます」というお知らせが書き込まれました。(Thanks! > しらとさん)
 青森は、高校の修学旅行で東北一周のはずが途中で体調を崩し行いけなかった町、棟方志功の故郷で記念館ができている町、一度行ってみたかったところです。しかも、今年は棟方志功の生誕百周年、記念展覧会も開かれるはず。加えて、昨年夭折されたナンシー関さんの展覧会を見れる機会、これは出かけなくては! そんな風に思いました。

 「なんしー!かむほーむ!!」展は8/1から8/17。ねぶたの後なら大丈夫だろうとのんびり構えていたら、いつの間にか7月末。大あわてで飛行機や宿を取るも、(ねぶた期間の7日まではもちろんのこと)すでに9日(土)の飛行機は満杯。お盆期間は言わずもがな。というわけで、結局、8/8スタート、8/10帰阪という旅になりました。
 仕事が山積みな事もあって、1泊2日にしよう、11日から別の出張だから8日朝早くスタートして9日のうちに帰阪できたらと思ったのですが。でも、結果として、このスケジュール、とても幸運でした。

※以下、ほとんどの写真はクリックすると大きくなります。

8月8日(金) 雨
 それにしても運が悪いというか、日頃の行いが悪いのか、今年最大の台風10号と一緒に旅することになってしまいました。不幸中の幸いだったのは、台風のスピードが予想以上に遅かったため、無事に飛行機が飛んだこと。
 もう一つラッキーだったのは(2泊3日になったので、午前中仕事に出てからということで)昼間の便にしたこと。搭乗口で何度も「霧のため花巻か仙台に下りる可能性があります」とアナウンスされたのですが、無事、青森に着陸することができました。朝や夕方だったら、どうなっていたことやら。

(→)雨模様なので、あまり外で写真を撮るのは望めそうにありません。とりあえず、搭乗口の前の花壇で親子たれさんの記念撮影。大阪でもちょうど雨が降り出したため、窓ガラスに水滴が。
(↓)今回の旅はJAS。めずらしく北ターミナルからの出発です。ちょっと遅めの昼ご飯(クリームチーズをサンドしたシナモンレーズンベーグルとアイスカフェラテ)を、吊したれくんと一緒に。
  

   (→)青森へ着いたら、すぐに沼田家(「なんしー!かむほーむ!!」展会場)へ伺う予定。おみやげに、空港で「今、一番売れてます!」と書いてあった猛虎(人形)焼きを買ってみました。北海道たれ・大阪たれと一緒に。    

 無事、青森に下りることができました。でも、気象条件は悪かったです。着陸しますアナウンスの後着陸直前まで10数分、窓の外は霧(雲)で真っ白。かなり気味悪い。ひどく揺れるしね。大人の私が気分悪くなったくらいなので、帰省旅行の子供さんはあちこちで泣き出してました。
 着陸後、バスで市内へ。宿泊ホテル最寄りのバス停で下りてまずはチェックイン。荷物を置いてすぐに沼田家へ向かいました。事前にインターネットで地図をダウンロードしてあったので迷うことなくたどりつけました。途中中央郵便局でねぶたの記念切手など買いながら、30分ほど歩いて沼田家到着。「なんしー!かむほーむ!!」展へ。
 沼田家内は撮影禁止だったので画像がご紹介できないのが残念ですが、ナンシー関さんの作品のすばらしさはもちろんのこと、「沼田家」という町屋の建物・お庭の存在感、そして、その空間と作品を調和させお互いをいっそう引き立たせ合う(まさにコラボレーションというべき)センス抜群の展示・レイアウト、あまりのすばらしさに言葉もありませんでした。(空間の利用のしかたとしては、これまで見た展示の中でベストかもしれない。)消しゴム版画を拡大し、それぞれの部屋・空間に応じたテーマの下に展示されていたのだけれど、コピーもふるっているし、展示の仕方も
  • パネルにする、
  • 凧絵にして天井から吊す、
  • 和紙の灯籠に仕立てる、
  • アクリル板に印刷しお茶室の炉のふたに使う、
  • お風呂やお手洗い、洗面台にもそれぞれの工夫でいろいろな展示が。
正直、ここまでとは予想していませんでした。作品を見て、作品の置かれ方を味わって、その空間にたたずむだけで、何とも言えない満足感に浸されます。一通り作品を見た後、また気に入った作品を見直し、しばらくゆっくりお庭を拝見しました。まさに至福の時。これだけでも、旅してきた甲斐があったな、そう思いました。
 これだけの展覧会を、手作りでされるとは。実行委員会の方々、ボランティアの方々、協賛の方々、ご苦労様でした。ありがとうございました。
 最後におみやげグッズをいろいろ買ったり(旅の途中なので、美味しそうな練り物が買えなかったのが残念)、しらとさんにお会いしてご挨拶したり(お忙しいところ、お時間ありがとうございました)。
   (←)唯一写真撮影可能だった、等身大(と思う)ジャイアント馬場さんのパネル。障子や畳の具合で大きさ、わかりますよね。

(→)たれちゃんずも一緒に撮影したのですが、あまりの大きさの違いに全身パネルとでは× 足の先だけのアップと一緒のまつりたれ、大阪阪神たれ、北海道野菜たれ。
   

 外へ出ると、ちょうど雨脚が激しくなったところで、ずぶぬれになりながら帰りました。
 夕食はホテルすぐそばのブルワリー。地ビールとチキンをいただきました。ビール、黒ビールやリンゴも一緒に発酵させたフルーツビールなどいろいろな種類がありました。
  

8月9日(土) 雨
朝から雨。とにかくTVをつけて台風情報を聞くと、なんと、「先ほど、兵庫県西宮市に再上陸しました」! うちと目と鼻の先じゃない。
大丈夫なんかなあ。心配だけれど、問い合わせたら、今日の大阪行きの便はすべて欠航とのこと。帰りたくても帰れもしない。(9日帰阪にしておかなくてよかった。)
というわけで、予定通り、棟方志功の展覧会をいくつか回ることにしました。それにしても「(午後は台風が東北へ接近するので)外は歩かないようしてください」って、えらい時に来たものです T_T

ともあれ、青森旅行もう一つの大きな目的、棟方志功さんの絵を見て回りました。
  • 生誕百年記念展 棟方志功−わだはゴッホになる− (青森県立郷土館)
    NHK主催の美術展(この後、奈良・東京・愛媛と巡回します)。若いときから出世作を経て代表作、晩年までの作品が時代順にまとめられていました。板画(志功はわざと「板」の字を使います)だけでなく、倭絵、油絵、書、陶器なども展示されていました。愛用していた道具や版木もあって、版木はさわることもできて大感激。生前の志功が出演するNHK特集のビデオが流されていたり、いろいろな角度から、棟方志功をとらえることができる展示会でした。
    それにしても、(はじめは油絵で、帝展入選を目指していた)志功が版画に転向したきっかけが川上澄夫とは。びっくり。初期の版画には、ぽっこりしたスカート、手に日傘の南蛮風貴婦人といった作品もありました。
    その後、さまざまな人との出会いを経て、また仏教に帰依することにより、作品がより大きくなっていきます。一生を通じ、人との関わり合いを大事にしたというか、(いい意味で)ずごく影響を受けやすい人だったんですね。いつも前向きで、どれだけ影響を受けようと常に自分であり続けて。すごいです。
    そういった知人への感謝の気持ちを忘れなかったところもすごいなと思います。人間、偉くなると、謙虚さを失いがちなものですけれどね。
    谷崎潤一郎の雑誌の挿絵もありました。挿絵って、どこか軽く見てしまうところあると思うのですが、これはすごいと思いました。「鍵」とか「瘋癲老人日記」とか、谷崎作品もすごいけれど、それに勝るとも劣らない迫力です。単品としてみても立派な芸術作品だし、しかも、谷崎の小説と呼応すると、両者の魅力がいっそう増すし。素晴らしい。制作背景(いい作品を作るために志功がとった作業など)を読んで、さらにいっそう感心。作品作りにそこまでの情熱を傾け続けたこと、凄いですね。凡人には真似るよしもないけれど、でも、見習いたいものだなあ。
    棟方作品ではよく「柵」ということばが出てくるのですが、この意味もはじめてちきんと知りました。そういう風に、ひとつひとつ作品と向き合って、それぞれの作品でいけるところまで力を振り絞っていって、前へ進んでいく。ほんと、すごい。
  • 棟方志功特別展 (棟方志功記念館、旧青森市民図書館)
    記念館は、志功の言(あまり大きな施設ではなく、せいぜい数十点を展示するのがよい)に従ってこじんまりとした建物、展示。でも、特に今回は、生誕百年記念ということで、普段は見れない個人蔵の作品がたくさん出品されていて、とても味わい深い作品が多かったです。年に数回入れ替えをするようですね。こまめに見に来れるといいのだけれど。
    そして、図書館の方では、晩年の棟方志功を撮り続けた濱田益水さんの写真展「棟方志功の業貌」。そう言えば、郷土館の展示目録で、志功のご子息が、志功夫人であるチヤさんが「パパのために記念館を建てる」と言って倹約生活をしていたというエピソードを紹介されていました。これまで、志功の家族のこと、ほとんど知りませんでした。すごく愛妻家、家族思いだったんですね。そんな家族、とりわけ奥さんとの生活ぶりを始め、旅やスケッチ旅行の様子、制作風景に至るまで、息づかいの聞こえてくるような迫力のある(制作風景の連写、静止画というそれぞれの瞬間を切り取ったものを連続して並べると、ビデオ映像=動画とはまた違った迫力があります)、家族のそして撮り手の温かい思いが伝わってくる写真の数々でした。
  • プラネタリウム「世界の板画家 棟方志功」(青森市中央市民センター)
    プラネタリウム見たの、小学校の遠足で明石の天文台行って以来じゃないかな。
    棟方志功が生まれてから没するまで(1903〜1975)、その時々にあった天文現象や板画の紹介をするという企画。とても面白かったです。
    そんなことがあったのかという話も多く、特に1910年青森大火の際、当時7歳だった志功が残した文章からすると、その大火を見た印象が志功が板画に彩色するときの色合いに大きく影響しているという話が興味深かったです。
    映し出される作品も前の2つの展覧会とはほとんどだぶっておらず、その背景も聞きながらゆったりと干渉することができました。
    本当なら、たまには空を見上げて星座を見るような生活をしたいですよね〜 住宅街じゃ、星なんて何にも見えないけれど。

いろいろ撮ってみたいスポットはたくさんあったのですが。お花も、あじさいを始めたくさん咲いていたし。でも、とにかく、土砂降りの雨。結局、この日撮った写真は、朝食(洋食)の写真だけとなりました T_T
4時頃ホテルに戻ったのだけれど、夕飯は、時間が合わないこともあって(5時にお店が開いてから外へ出る元気がなかった)、コンビニ弁当。青森まで来て、それはないなあ・・・
  

あじさいがまだ咲いているくらいなので、当然関西よりかなり涼しいのですが、旅行前は5度くらい低いのかなあと思っていたら、雨のためか昨日も今日も最高気温22度。長袖持ってきててよかったぁ。10度も違うなんてねえ・・・

8月10日(日) 雨のち曇りのち晴れ
 事前に調べてきたのは絵画展のことだけという状態だったので、さあて、今日は何をしましょうか? 台風はもう北海道へ抜けたらしいのだけれど、お天気相変わらずぐずついているし・・・で、昨日もらったパンフレットに載っていた八甲田山のロープウェイ(360度展望が開けるらしい。たれちゃんの写真撮れるかな?)とねぶたの里(郷土館の展覧会で、志功がねぶたが好きだったことを知り、そして実物の模型を見てその迫力に驚いたので、一度実物を見てみようと思いました)に行ってみることに。

   (←)とりあえず、朝食の写真です。今日は和食にしてみました。

   まず青森駅へ向かいます。青森到着以来、町はずれからさらにはずれた所にある美術館巡りをしたため、市内中心部に向かうのは初めてです。ねぶたの時期なので。アーケードにはねぶたの灯籠が飾られていました。(右は一つの灯籠を拡大したところ)   

十和田湖へ向かうバスに乗り、途中にある、青森駅から1時間ほど離れた八甲田山ロープウェイ乗り場へ向かいました。途中、萱の茶屋というところで、おみやげタイムがあり、長寿の麦茶やらおみやげを購入。
しかし、お天気悪いなあ。あ、雨が降り出した・・・T_T

   八甲田山ロープウェイ、今年5月にリニューアルされたところでなかなかカッコよかったです。でも、霧がひどくて窓の外はただ真っ白、な〜んも見えない。(すれ違った対向車は見えたから、視界1mとか?) 当然の事ながら、頂上も(フラッシュ炊いて)こんな感じ。気温は14度、寒い・・・   

   しようがないので、折り返し次の便ですぐに下へ降りてしまいました T_T
雨はどうにかやんだので、ねぶたの里へ行くバスを待つ間に、たれちゃんの記念撮影。親子たれさん、全然写真撮ってないものね。
  

   ねぶたの里は屋内施設だから、お天気悪くても大丈夫かな? ゲートを入り、渓流わきの杉林(←)を見ながらしばらく歩きます。観光馬車も走っていたり。そうこうするうちに、メイン施設、ねぶたが常設展示してあるねぶた会館に到着。入り口にはねぶた祭りを練り歩く様子の模型が(→)   

そして、建物の中を見ると。おお、これはスゴイ! ずらーーっと大型のねぶたが並んでいます。思わず見惚れて、写真を撮りまくってしまいました。(6枚目の写真に見物の方が写っていますので、ねぶたの大きさがわかります)

青森のねぶた(↑)はでこぼこというか、突き出た部分があるというか、物そのものの形に作ってあるのに対し、弘前のねぶたは扇形(下・中央)なんですね。太鼓やいろいろな展示もありました。親子たれさんも屏風絵の前で記念撮影。
時間が合えば、ねぶた運行体験ショー(ねぶたを曳いたり、ハネトになって踊ったり)に参加したいところですが、飛行機の時間があるので残念ながら体験できず。
それにしても、ねぶたのお囃子はいい感じですね。聞いていると、思わず体が踊り出しそう。

     

見物を終わると、お昼少しすぎ。そろそろ青森市内へ戻らなくてはいけません。りんご味のソフトクリームを食べながらバスを待っていると、だんだん晴れてきました。ああ、昼からは台風一過で晴れてくるんだなあ・・・・・

    青森市内へ戻りました。 空港行きのバスまであと30分。もう少し時間があれば、もう一度沼田家へ伺って、雨の日とはまた違った趣を感じてみたかったのだけれど、残念ながら時間が足りません。
 港で写真を撮ることにしました。背景に見えている海は青森湾。ずーっと行くと、下北半島や津軽半島の先に北海道があるんですね。
  

 

 残念ながら、お天気には恵まれませんでした。あと、事前にもう少しいろいろ調べていたら、(たとえば、上・中央に写っている八甲田丸にはロバート・キャパの常設展があったらしい)より楽しめる旅になっていたかも。
 でも、念願の青森に来れて、しかも、ナンシー関さん、棟方志功さんの作品をたーっぷり楽しめて、いい旅行でした。また、いつか、今度はねぶたを見に来れるといいなあ。